ふるさと精油をつなぐ会

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コラム
2020/10/08

会員限定コラム 第五回 池田明子

「国内アロマ業界の現状と国産精油の今後」

突然起こったコロナ禍により、世界の経済が大きな影響を受けています。今回は、日本のアロマ市場について、2018年のデータではありますが、すでにレポートがある日本アロマ環境協会、日本アロマ環境協会「2018年アロマ市場に関する調査レポート」ウーマンズラボによる市場調査、健康産業新聞などを参考にして、アロマ業界の現状と国産精油の今後の展開についての考察を記します。

日本のアロマ市場が緩やかに成長する中、教育関連は下降気味

2018年のアロマ市場は3,564億円で、2015年から増加(7%程度)しました。アロマ化粧品と、精油を利用した「虫よけスプレー」や「ルームスプレー」(2015年比151%増(22億円))が市場を牽引した一方で、アロマセラピー教育・資格関連の事業(書籍・DVD、各団体の認定スクールや通信教育など)は2015年と比べ9%減(130億円)で、厳しい状況となっています。縮小傾向にある教育関連市場は、今年になって新型コロナウイルスの影響も大きく受けており、今後もしばらくは弱含みと思われます。一方、2018年のアロマ市場の増加を牽引したアロマ化粧品と精油を利用したスプレーなどは、在宅ワークの増加により、化粧品よりも、「虫よけスプレー」「抗菌スプレー」「マスクスプレー」などの製品がかなり伸びるのではと予想されます。

物販は、「より手軽に」、「眠り」、「和精油」に注目

また2018年は、アロマセラピー教育・資格関連の事業の縮小化に伴い、「精油」や「基材」の市場規模も約20%減となっています。精油を自分で調合するより、「手軽に、簡単にアロマを楽しみたい」という傾向がさらに広がっています。特に「眠り」「心を落ち着かせる」など、わかりやすく効果を感じさせるネーミングのブレンド精油製品が売上を伸ばしています。精油関連外ですが、「眠り」をキーワードにした商品は特に好調で、睡眠に特段悩みのない健常者も、「よりQOLを高めたい」「美しくなりたい」ということから良質な睡眠を求めているようです。大手雑貨店のマスクの売り上げでは、コロナ禍以前から、睡眠時に着用できるシルクのマスクなどの安眠商材が前年比260%増。安眠商材は女性だけでなく、男性の需要も伸びています。
精油に目を向けますと、国産精油の人気は高く、クロモジやヒノキは高価でも売上げは良好で、ユズは配合製品として好調です。国産、安全という意識や、日本人にとって懐かしいような香り、ホッとする安心感を覚える国産精油はこれからも有望市場といえそうです。

国産精油で「空間」、「男性」と「シニア女性」をターゲットに

コロナ禍でのライフスタイルや生活価値観の変化で、プライベート(室内)空間を充実させたいという意識が高まっていることがあります。また男性のアロマ需要が伸びていること、元気なシニアを対象としたものやサービスを充実させることが挙げられます。男女、年令を問わず、抗菌作用のある癒される香りに包まれて過ごす・テレワークをする、安眠できる寝室、リラックスできる居住空間への意識はこれまで以上に高まっています。国産や自然志向が浸透し、男性にも精油への関心が高まっているようで、アロマ専門店に足を運ぶ男性も増えているということです。

今や人生100年時代。高齢化・長寿化が進む中、医療・介護を過度に必要としない元気な高齢女性が増えていくと予想されます。介護に特化した商品やサービスは充実しているものの、元気なシニアを対象とした「普通のモノ・コト市場」はまだ十分開拓されていないのではないかと思われます。元気でも認知症への関心は高いはずですから、国産精油の効能のアピールの仕方を工夫する、ストレス解消や認知症予防にも有効なことを様々なメディアを用いて伝え続ける、ターゲットを絞った国産精油を印象的なパッケージで展開するのも一考です。

教育市場の需要を伸ばす ―国産精油のオンライン講座の充実と異なるカテゴリーでさりげなくマーケティング

先にも述べた通り、縮小傾向にある教育関連市場は、今年になって新型コロナウイルスの影響も大きく受けており、今後もしばらくは弱含みと思われます。対面授業が難しい中、オンライン講座において、国産精油に特化した講座など、今後も続くと予想されるコロナ禍でのオンライン体制の強化の一つに国産精油の活躍の場を見出せそうです。また産地の動画やVR(バーチャルリアリティー)と講座とのコラボなど、マーケットセグメントとの見方もありますが、国産精油に興味関心の高い方をターゲットにして持続展開することも教育市場の需要を伸ばす方策の一つになると考えます。