- コラム
- 2022/11/16
貝のささやかなつぶやき / ふるさと精油をつなぐ会代表
1.はじまりのごあいさつ
代表を務めさせていただいておりますヤタガイです。よくどんな字を書くのかと聞かれます。谷川岳の谷に田んぼの田、それに貝殻の貝ですと答えます。そうです、私のご先祖は谷の合間の田んぼに暮らすタニシだったのです。そんなご先祖を思い貝のつぶやきを会の委員の皆様にお認めいただきしばらくはシリーズで書かせていただくことになりました。
お時間の許すときにお目を通していただければ幸いです。
6~70年頃前までは田んぼにタニシもすんでいました。田んぼ脇の水路はゲンゴロウ、タガメ、タイコウチ、アメンボウ、ザリガニ、ドジョウ、フナなどでにぎわっていたものです。子どもたちが字書き虫と言っていたミズスマシは忙しく水面を動き回っていたのです。畔ではトンボが行きかい、バッタが飛び跳ねていました。それが今では影を潜めひっそりと静まり返っています。ご先祖様のタニシもめっきり影を潜め、さびしい限りです。
何がそうさせたのでしょう。農薬が多量に投与されたのをきっかけに、にぎやかに動きまわっていた田畑の虫たちは姿を消し、田んぼの間を流れる用水路はコンクリートで固められ,ドジョウが潜り込む余地もなくなってしまったのです。
そのような中で農水省は化学合成品による環境負荷を減少させるための「みどりの食料システム戦略」を2021年に打ち出しました。化学農薬の使用量を2050年までに50%に低減し,化石燃料などを原料にした化学肥料の使用量を30%低減するというものです。そして有機農業の取り組みを進め有機農業面積を100万ヘクタールに拡大する計画です。わが国はイタリア、ドイツ、フランス、英国などの欧州の国に比べ耕地面積に占める有機農業取組面積が低く1%にも満たないのが現状です。化学農薬を使用する農業に代わり有機農業が普及することで昆虫や魚などで賑わいを見せていた田んぼが戻って来ることでしょう。
最近、地球温暖化が問題視されています。化石資源の過度の使用によって引き起こされた温暖化を抑えるために化学農薬などの使用を抑えようとするのがみどりの食料システム戦略のねらいの一つでもあるのです。有機農産物を認証する有機JAS認証制度も2000年にスタートし、有機農産物の表示がルール化されています。
化成品の農地への使用を控え有機農業を推進することで農業生態系の健全性が促進されます。その結果として生物の多様性も保たれます。多くの生き物が生活するところにこそ、豊かで健全な自然環境が創り出されるのです。その時にはご先祖様、タニシにまたお会いすることができるかもしれません。