- コラム
- 2022/11/29
植物成分の豆知識(ふるさと精油をつなぐ会代表 谷田貝光克)
1.はじめに
地球上に生存する植物の種類は多く、形態も働きも多種多様です。そのような植物を形づくるもの、それが植物成分です。このシリーズでは植物成分のなかでも植物の香りとなり、色となり、耐久性などの活性のもととなり、個々の植物を特徴づけるいわば植物のカギ物資ともいえる抽出成分を中心にご紹介することにいたします。
草木など植物の成分とその働きは?
2.植物を構成する成分
植物は大気中の二酸化炭素と根から吸い上げた水を使って太陽エネルギーで光合成を行いグルコース(ブドウ糖)を作ります。さらにグルコースをもとにして植物のからだを形作るいろいろな成分を作ります。無機物からからだを作れるのは植物だけで、ヒトも動物もその植物を食べてからだを作ります。このことは植物だけが地球上すべての生き物を養う能力をもっていることを意味します。
地球温暖化が進行する中で温暖化の原因となる二酸化炭素を吸収して育つ植物は、バイオマスの利用として最近注目を浴びていますが、植物は環境保全にも役立っているのです。バイオマス発電もその一つです。森林樹木などの木質系資源を熱源として利用するバイオマス発電はカーボンニュートラルな利用として普及しつつあります。ただ、樹木がいくら急いで二酸化炭素を吸収しても成長には時間がかかりますので伐りすぎない、使いすぎないことが大切です。過度の森林の伐採が温暖化を助長したとも言われています。地球温暖化は物言わぬ森林の警鐘であり、森林に限らず植物の意思を無視してヒトの考えで略奪してきたことのしっぺ返しなのかもしれません。いくら良いものでも伐りすぎ、使い過ぎてよいものを失くしてしまっては元も子もありません。森林をはじめとした植物とともに生きること、それが大切です。
さて話を元に戻しましょう。植物を形作っている主な成分にはセルロース、ヘミセルロース、リグニンがあります。この三成分は植物体の大きな割合を占めていますので主要三大成分と呼ばれています。例えば樹木の幹である木材ではこの三成分の合計がおよそ85~90%、稲わらでは75~80%、バガスでは80~85%です。三成分以外に少量成分として抽出成分、デンプン、ペクチン、無機質などが含まれています。主要三成分が植物の細胞壁構成成分であるのに対して少量成分は細胞内含有成分です。そして色や香りのもととなっているのが抽出成分ですが、主要三大成分が高分子であるのに対して抽出成分は分子量が高々1000程度の低分子です。それゆえに抽出成分は水やアルコールなどの有機溶媒に溶け抽出されるのです。