ふるさと精油をつなぐ会

ふるさと精油で山に活力を

ふるさと精油で山に活力を

 「ふるさと精油」耳慣れない言葉かもしれません。今年発足しました私たちの会が国産精油につけた呼び名です。そして生物資源(バイオマス)の有効活用、最近よく耳にする言葉です。それには実はこんな理由があるのです。科学技術の進歩は石油等の化石資源から天然物の多くの代替品を作りだしました。大量生産ゆえに安価で、かつ容易に手に入る化石資源からの代替品は私たちのくらしを便利にし、豊かにしてくれました。

ところがその反面、世界的に合成農薬の化学汚染、マイクロプラスチックの海洋汚染など、マイナスの面が表面化してきているのも事実です。それに加えて森林の過度の伐採などよって地球温暖化が進む中で、森林資源の大切さがこれまでにも増して重要視されています。

そのような中で有限な化石資源に代わり、再生可能な森林樹木を主体とした生物資源の利用が注目されだしたのです。一昔前までは私たちは衣食住はもとより、生活の多くのものを身近な草木に求めてきました。もちろんわが国においても例外ではありません。環境汚染や地球温暖化が進む中で、今また自然に立ち帰り、そのめぐみを見直す時期になったのです。

 わが国は世界有数の森林国です。大都会のビルの谷間からでも1時間も電車に乗れば木々の生い茂る森林の雰囲気に浸ることができるのです。身近に豊富にあると得てしてそのありがたみを忘れがちになります。森林は、水資源貯留、水質浄化、表層崩壊防止、洪水緩和、保健・レクリェーションなどの環境資源としても重要な機能を有しています。わが国の森林の環境資源としての機能は年間に70兆円にもなると算定されています。この数値は地下水涵養、土壌崩壊防止、生物多様性保全、原風景保全などの農業の多面的機能の10倍近くにも及びます。

 ところで、そのような多くの機能を持ち、また、暮らしに役立つものを恵んでくれる森林ですが、森林にはまだまだ私たちが十分には利用しきれてないものがあるのです。その一つが精油、ふるさと精油です。

森林の最も大きな生産物、それは家屋の用材として利用される木材です。そして森林が生産するものには木材以外の非木材生産物、いわゆる特用林産物があります。きのこ、樹脂、薬用植物、精油などです。戦後、戦災で焼失した家屋の建設のための木材不足を補うために多くの山にスギ、ヒノキなどが植林されました。それらの人工林は利用可能な樹齢に達しているにもかかわらず利用率が低く、木材の自由化に伴って海外から安価に入る輸入木材に大きく依存しているのが現状です。わが国の林業産出額が昭和50年頃には木材生産額が90%近くを占め、特用林産物が10%ほどであったものが、現在は木材生産額と特用林産額がほぼ同じ程度になっています。その現状は国産材が輸入材に取って変わられていることが大きな理由ですが、裏を返せば特用林産物の重要性が増しているとも言えます。現在の日本の林業を引っ張っていっているのに大きな役割を果たしているのが特用林産物なのです。特用林産物の大きな割合を占めているのはきのこ類ですが、精油も特用林産物の一つです。 

 最近、国内に生育する樹木からの精油が注目を浴びています。最近の科学技術の発展によりこれまでは未知であった生理機能などの働きが明らかにされてきているのがその理由の一つです。例えば、各種精油のストレス軽減、リラックス効果、ヒバやクロモジ精油の制ガン作用、ヒノキ精油の肥満抑制、スギ葉精油のアトピーのかゆみ軽減、胃潰瘍抑制など、次々とこれまでには知られていなかった事実が明らかにされています。これらのことからもお分かりのように、これまでの精油のアロマとしての利用からさらにその生理機能を活用した医療、未病対策など、ヘルスケアへの利用が期待されています。さらには病害虫防除などへの幅広い利用もなされるようになりました。このことは樹木精油に限ったことではありません。自然環境が作りだす草木の精油のこれまでにはない幅広い活用が期待されているのです。そして、これまでは海外からの植物精油が市場を賑わしていましたが、最近では日本の精油の海外進出の試みもなされだしています。海外にはないわが国固有の精油の良さが評価されだしているのです。 

 樹木精油は間伐材等の林地残材や製材端材などからも採取できます。これらの利用はまさに生物資源を余すところなく利用することにほかなりません。精油の利用は長年かけて成長し続け、数多くの恵みをもたらしてくれた木々たちへの感謝の意を込めた恩返しでもあるのです。 そして樹木精油の利用は山で働く人たちへの利益還元となりくらしに役立ち、山の活性化にもつながるのです。さらにそれは森林が数多くの恵みを絶えることなく私たちに与えてくれることへの下支えにもなるのです。

そしてもう一つ言えることは、森は決して山に住んで森で働く人たちだけで守るものではなく、街の人たちの協力と理解があってこそ、元気な森が育つということです。精油の利用はそのような点でも大きな役割を持っているのです。精油を生産する人たちとそれを利用する消費者とのつながりがあってこそ森に活力がみなぎることでしょう。

20世紀は人間が思うままに豊富にある天然資源を採りだし、自由自在に加工し、自分の都合に合わせて利用してきた時代でもあります。言いすぎるかもしれませんが、自然からの略奪の時代でもあったのです。その結果、環境問題や資源問題が起きだし、地球の悲鳴を聞くことになってしまいました。自然からのしっぺ返しを食らったのです。これからの時代、自然の営みをしっかりと理解し、自然との共生が求められることでしょう。森林についても同じです。森林資源を余すところなく利用しながら森林の生産性を向上させ、活気ある森林のもとでそのめぐみを受けつつ、森林と共に生きることがこれからは求められることでしょう。